2014年の主な彗星の光度変化

2015年6月6〜7日 第45回 彗星会議 in さいたま大宮

吉田 誠一 / Seiichi Yoshida
comet@aerith.net
http://www.aerith.net/

■目次

■肉眼で見えた彗星

●C/2014 Q2 ( Lovejoy )

q = 1.29 a.u. ですが、3つの理由で、期待された以上に明るくなりました。

  1. 急激なペースで増光。
  2. 近日点を過ぎても増光が続き、25日も後にピーク。
  3. ピークを過ぎた後は、減光のペースが遅い。

ピーク前m1 = 2.5 + 5 logΔ + 20.0 log r(t - 25)
ピーク後m1 = 3.6 + 5 logΔ + 10.0 log r(t - 25)

■明るくなった新彗星

●C/2012 K1 ( PanSTARRS )

絶対光度が5.5〜5.8等と、大型の彗星らしく、安定した光度変化を見せました。

近日点までの増光のペースは 8.5 log r とやや鈍く、近日点を通過した後は、急速に減光しました。

●C/2013 A1 ( Siding Spring )

2014年10月19日に火星に大接近して話題となりました。

当初は、火星ではマイナス6等級の大彗星が見られる、と期待されましたが、増光のペースは 6.0 log r と、極めて鈍いものでした。さらに、近日点の40日も前に増光が止まり、減光に転じてしまいました。

ところが、近日点を通過した直後にバーストを起こし、2等ほど増光して、結果的に、元の明るさに戻ってしまいました。

結果的には、2つのピークの間の、最も暗くなったタイミングで、火星に大接近したことになります。

その後は、18 log r という急激なペースで減光しています。

●C/2013 UQ4 ( Catalina )

r = 2 a.u. まで迫ってから彗星活動を示し、12.5 log r のペースで急激に増光しました。

●C/2013 V5 ( Oukaimeden )

q = 0.63 a.u. まで太陽に近づく彗星ですが、r = 1.2 a.u. まで近づいた時点で、増光が鈍りました。

近日点の前後では、絶対光度は8.5→10.5等と減光しました。

●C/2014 E2 ( Jacques )

q = 0.66 a.u. まで太陽に近づく彗星ですが、15 log r のペースで急激に増光しました。 しかし、r = 1.4 a.u. まで近づいた時点で、増光が鈍りました。

●C/2014 Q3 ( Borisov )

65 log r のペースで、非常に急激に増光しましたが、近日点の2週間ほど前にピークとなり、早々に減光に転じました。

周期151年の長周期彗星らしい傾向だと思います。

●C/2014 R1 ( Borisov )

18 log r のペースで、急激に増光しました。

●C/2015 C2 ( SWAN )

●C/2015 F3 ( SWAN )

●C/2015 F5 ( SWAN-Xingming )

2015年の春に、SWANの画像から、相次いで新彗星が発見されました。

C/2015 F3 ( SWAN ) は、C/1988 A1 ( Liller )、C/1996 Q1 ( Tabur ) の分裂核と思われます。

彗星qH10
C/2015 C20.7111.0
C/2015 F30.8310.5
C/2015 F50.3513.0

●C/2015 G2 ( MASTER )

q = 0.78 a.u. まで太陽に近づく彗星ですが、10 log r のペースを保ち、6等まで明るくなりました。

■明るくなった周期彗星

●15P/Finlay

12月半ばと、1月半ばと、二度のバーストを起こしました。

元々、急激に増光し、近日点の20日後に最大光度となる傾向があります。 バーストは一時的で、本来の光度変化には影響が無かったようです。

●88P/Howell

急激に増光し、近日点の15日後に最大光度となる傾向があります。

■特異な光度変化を見せた彗星

●C/2013 C2 ( Tenagra )

q = 9 a.u. と遠方の、絶対光度が3〜4等の大型の彗星です。 2月20日にバーストを起こし、3等ほど増光しましたが、すぐに元に戻りました。

174P/(60558) Echeclus と状況が似ています。

●C/2015 D1 ( SOHO )

q = 0.03 a.u. と、太陽にかなり接近しました。 核の崩壊が近日点を通過した後だったため、地上からも残光が捉えられました。

近日点で2回増光し、絶対光度は17→11等まで明るくなりました。

●17P/Holmes

2007年に大バーストを起こした後の、初回帰です。大バースト前と比べると、1.5等ほど明るい状態です。

今回も、近日点から10ヶ月も経った1月26日に、4〜5等のバーストを起こしました。

●72P/Denning-Fujikawa

1978年以来、36年ぶりに観測されました。

バーストして、異常に明るくなっていたはずですが、それでも、絶対光度は17〜18等です。

●280P/2004 H2 = 2013 C1 ( Larsen )

2004年の発見時も、今回も、異常に急減光しました。

73P や 141P の分裂核のように、一時的に増光した直後の、不安定な状態にあるのかもしれません。

■急激に増光した彗星

●C/2014 W9 ( PanSTARRS )

周期37年の短周期彗星です。25 log r と、急激に増光しました。

●C/2014 W11 ( PanSTARRS )

周期31年の短周期彗星です。こちらは q = 3.4 a.u. と遠方の彗星ですが、急激に増光しました。

●P/2014 X1 ( Elenin )

22 log r のペースで急激に増光し、近日点を通過した後も増光が続いています。

■暗くなった周期彗星

●32P/Comas Sola

過去2回は、22.5 log r と急激に増光したのですが、今回は 12.0 log r と増光が鈍く、2等ほど暗くなりました。

q = 1.8 → 2.0 a.u. と、わずかに遠くなっています。

●210P/Christensen

q = 0.53 a.u. まで太陽に近づく短周期彗星ですが、15〜17.5 log r のペースで、急激に増光します。 このような彗星は、96P/Machholz 1 を始めとして、いくつかあります。

過去3回の出現を比べると、回帰のたびに暗くなっています。

回帰絶対光度
2003年13.0
2008年14.0
2014年16.0

但し、過去2回はほぼ近日点後のみ、今回はほぼ近日点前のみ観測されているので、近日点通過後の方が明るいタイプの可能性もあります。

●284P/2007 H1 = 2013 J1 ( McNaught )

2007年の発見時も今回も、20 log r のペースで急激に増光しましたが、絶対光度は5.7→7.0等と暗くなりました。

■明るくなってきた彗星

●C/2013 US10 ( Catalina )

絶対光度は4.6等で、q = 0.82 a.u. まで太陽に近づきます。 日本からは、12月〜1月に、5等級で観測できます。

●C/2013 X1 ( PanSTARRS )

絶対光度は5.5等で、q = 1.31 a.u. まで太陽に近づきます。 2016年の春から夏にかけて、6〜7等まで明るくなります。

●C/2014 Q1 ( PanSTARRS )

7月6日に近日点を通過します。q = 0.31 a.u. まで太陽に近づきますが、日本からは見えません。

最大で2〜3等まで明るくなると予想されていましたが、増光が 7.5 log r と鈍く、6等止まりのようです。