2016年の主な彗星の光度変化

2017年6月10〜11日 第47回 彗星会議 in 旭川

吉田 誠一 / Seiichi Yoshida
comet@aerith.net
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■目次

■明るくなった彗星

●2P/Encke

近日点の100日ほど前から急増光した後、近日点の直前では増光が鈍り、近日点を過ぎた後は急減光する傾向は、いつも通りでした。

彗星の明るさも、光度変化の特徴も、20年前からずっと変わっていません。

●41P/Tuttle-Giacobini-Kresak

3月から4月にかけて、地球に0.14天文単位まで大接近しました。

1995年は近日点後に、2001年は近日点前に二度、バーストを起こしました。

今回は目立ったバーストは無く、m1 = 10.0 + 5 logΔ + 33.0 log r で安定した光度変化でした。

●45P/Honda-Mrkos-Pajdusakova

2月中旬に地球に0.08天文単位まで大接近しました。

近日点の前は m1 = 14.2 + 5 logΔ + 23.0 log r と急激に増光し、近日点の後は m1 = 12.0 + 5 logΔ + 15.0 log r とやや緩やかに減光する傾向は、いつも通りでした。

●C/2015 ER61 ( PanSTARRS )   q = 1.04 a.u.

4月4日に、8.5等から6.5等までのバーストを起こしました。

●C/2015 V2 ( Johnson )   q = 1.64 a.u.

絶対光度は5.0等と明るく、太陽にあまり近づかない彗星ですが、近日点で増光が鈍りました。

●C/2016 U1 ( NEOWISE )   q = 0.32 a.u.

絶対光度は10〜11等と小さい彗星ですが、近日点距離が小さく、太陽に近づいて急激に明るくなりました。

近日点まで 10 log r のペースで増光し続けました。 近日点を過ぎた後も、SWANの画像ではしばらく明るく見えていました。 しかし、南半球の空に現れた頃には、捉えられませんでした。

離心率は 1.000 であり、周期彗星ではありません。

●C/2017 E4 ( Lovejoy )   q = 0.49 a.u.

絶対光度は11〜12等と小さい彗星ですが、23.5 log r のペースで急増光しました。

しかし、近日点の20日ほど前に、拡散・減光に転じました。

光度変化は、C/1996 Q1 ( Tabur ) と大変良く似ています。

■眼視で見えた彗星

●C/2016 A8 ( LINEAR )   q = 1.88 a.u.

周期210年の短周期彗星です。 m1 = 6.5 + 5 logΔ + 21.0 log r と、急激に増光しました。

●C/2016 VZ18 ( PanSTARRS )   q = 0.91 a.u.

周期2700年の長周期彗星ですが、枯渇した短周期彗星のように、近日点の近くで急激に増光・減光しました。

●C/2017 E1 ( Borisov )   q = 0.90 a.u.

●43P/Wolf-Harrington

●144P/Kushida

●237P/LINEAR

近日点距離が 2.42 → 1.98 a.u. と、太陽に近づくようになって、予想以上に明るくなりました。 75 log r と急激に増光しました。

■特異な光度変化を見せた彗星

●73P/Schwassmann-Wachmann 3

1995年の大バーストから4回目の回帰です。

新しい分裂核・BT核が現れ、一時、主核よりも明るくなりました。

2006年に主核とほぼ同じ明るさで観測されたB核は、2011年、2017年と、その後は観測されていません。

2006年の回帰で、大バースト前の元の明るさに戻りました。 今回は、大バースト前よりも暗くなりました。

●157P/Tritton

1978年にバーストを起こして発見され、2003年に再バーストを起こして再発見された彗星です。

今回は、近日点から1年ほど経ってからバーストを起こしました。

●174P/(60558) 2000 EC98 ( Echeclus )

2016年8月に、3回目のバーストを起こしました。

3回のバーストでは、いずれも、14等まで明るくなりました。

年月日心距離最大光度
2006年1月13.0 a.u.14等
2011年5月8.5 a.u.14等
2016年8月6.3 a.u.14等

●226P/Pigott-LINEAR-Kowalski

200年以上に渡って行方不明になっていた彗星です。

特に軌道は変化していませんが、過去2回の出現と比べて、今回は近日点の近くで明るく観測されました。

出現近日点距離
2003年1.92 a.u.
2009年1.77 a.u.
2016年1.78 a.u.

●315P/2004 VR8 = 2013 V6 ( LONEOS )

3月に、一時的な小さなバーストを起こしました。

●C/2016 R3 ( Borisov )   q = 0.45 a.u.

絶対光度は13.5等と、かなり小さい彗星です。 近日点で消滅したと思われます。

C/1915 R1 ( Mellish ) と軌道が良く似ています。

■ピークが近日点からずれている彗星

●136P/Mueller 3

近日点から130日も後に最大光度になる傾向は、今回も同じでした。

●346P/2007 T6 = 2016 R1 ( Catalina )

3回の出現の光度変化を繋げると、m1 = 9.5 + 5 logΔ + 18.0 log r(t - 100) と、近日点の100日後に最大光度となるようです。

●C/2014 HU195 ( Valdes-TOTAS )   q = 5.1 a.u.

m1 = -2 + 5 logΔ + 25 log r(t - 300)

●C/2015 LC2 ( PanSTARRS )   q = 5.9 a.u.

m1 = -10.2 + 5 logΔ + 30 log r(t - 550)

●C/2016 T1 ( Matheny )   q = 2.3 a.u.

m1 = 11.5 + 5 logΔ + 15.0 log r(t + 80)