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天体観測の現実

天文の世界では、天体を実際に観測することが極めて大切である。 しかし、現実には対象となる天体が多すぎて、とてもプロや世界的に有名な天文 台だけでは手に負えない。 そこに我々アマチュアが介入する隙間があるのである。

しかし最近は、近年のアマチュアの活躍を以ってしても、とても充分な観測成果 は得られていない。 ここでは彗星を例にあげて説明しよう。 例えば彗星の光度観測では、以下のように、彗星の明るさによって全然観測数が 異なっている。

C/1995 O1 ( Hale-Bopp ) 1995.7.23 - 1996.9.16 629
C/1996 B2 ( Hyakutake ) 1996.1.1 - 1996.8.24 561
C/1996 E1 ( NEAT ) 1996.3.15 - 1996.9.8 57
125P/Spacewatch 1996.3.21 - 1996.9.2 23
C/1996 Q1 ( Tabur ) 1996.8.19 - 1996.9.15 39

また、上記の彗星の軌道要素を計算するのに使われた観測数もあげておく。

C/1995 O1 ( Hale-Bopp ) 1993.4.27 - 1996.9.15 1278
C/1996 B2 ( Hyakutake ) 1996.1.1 - 1996.5.23 782
C/1996 E1 ( NEAT ) 1996.3.15 - 1996.8.26 190
125P/Spacewatch 1991.9.8 - 1996.8.15 137
C/1996 Q1 ( Tabur ) 1996.8.21 - 1996.9.15 37

百武彗星やヘール・ボップ彗星のような大物彗星は別格として、ほとんどの暗い 彗星はごく小数の限られた人々によって、ほんの少ししか観測されないままで終 わってしまう。

今年の7月には、57P/du Toit-Neujmin-Delporte という彗星がいつの間にか100 倍以上も明るくなっているのが発見された。 これはそういう暗い彗星をほぼ毎月1回定期的に観測している人が見つけたのだ が、もしその人がその彗星を観測しなかったら、そのバーストの事実自体が見つ からなかったかもしれない。 また、彗星自体はその人が観測する前に既にバーストしていたのだが、他に誰も 見ていなかったため、いつバーストしたのか分からない。 このように、天体はいつ何が起きるか分からないため、観測は極めて重要である。 また、新天体の発見直後は一番観測が求められる時期だが、どうしても観測数が 少なくなってしまう。 そういう意味では、速報性のある観測も大切だと言える。

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Mon Nov 11 15:52:55 JST 1996