MISAO Project

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1999年6月6日

    未知の変光星を掘り出す    

MISAOプロジェクト・アナウンスメイル (1999年6月6日)

MISAOプロジェクトの吉田誠一です。

4月3日に、MISAOプロジェクトでの最初の新変光星 MisV0001 の発見を発表し ました。その後も新たな画像を得るたびに新変光星の捜索を続けており、6月1 日までに合計32個の新変光星を発見しています。すべての変光星について、変 光を示した画像やこれまでの測定光度のデータが、MISAOプロジェクトのホー ムページで公開されています。

http://www.info.waseda.ac.jp/muraoka/members/seiichi/misao/

これまでに発見された変光星の一覧表を末尾に掲載します。この表から、いく つか興味深いことが分かります。

まず、発見された新変光星にはかなり偏りがあります。32個のうちの実に24個 までが、さそり座新星1998を撮影した画像から発見されています。また、残り の8個のうちの4個までが、桜井天体(V4334 Sgr)の画像から発見されています。

変光星を発見するためには、同じ領域を時間を空けて2回以上撮影しなければ なりません。しかし、門田健一氏と吉田誠一による上尾サーベイチームは、4 月初めに本格的なサーベイ活動を開始したばかりです。3月以前は、主に彗星 や新星、超新星の撮影を行っていました。そのため、現時点では、ある程度の 期間を空けて2回以上同じ場所を撮影した画像がほとんどありません。かろう じて、さそり座新星1998付近、桜井天体付近を何度か撮影しているだけという 状態です。そのため、発見された変光星もほとんどその領域に限られています。

これらの画像の大きさは、わずかに 0.8x0.5度、もしくは 1.5x1.0度でしかあ りません。その狭い領域からでも、意外に多くの新変光星が発見されました。 このことから、実はかなりの個数の変光星が未発見のまま残されているのでは ないかと思われます。

MISAOプロジェクトで発見された新変光星は、極大光度が11等から14等程度の ものです。これらの多くは、ミラ型の長周期変光星だと思われます。ミラ型変 光星は赤い星なので、CCDではかなり明るく写ります。MISAOプロジェクトで測 定した既知のミラ型の変光星の光度から、ミラ型変光星のCCD光度は、眼視光 度に比べて2〜3等ほど明るくなることが分かっています。つまり、これらの新 変光星も、眼視や写真では極大が14〜17等という、大変暗い星です。このこと からも、従来の写真による捜索では、多くのミラ型変光星が発見されずに残さ れていると想像されます。

さそり座新星1998の画像と、桜井天体の画像とでは、発見された新変光星の個 数に大きな差があります。PIXYシステムで検出された恒星数は、それぞれ約 6000個、約3500個で、倍近くの開きがありますが、発見された変光星数の比は 6倍もあります。これは、観測期間の差が原因と考えています。さそり座新星 1998の画像は、1月30日から5月7日まで、3カ月半の期間に及んでいます。一方、 桜井天体の画像は、2月12日から4月29日まで、2カ月半の期間しかありません。 実際には、2月12日と4月29日では機材が異なります。同じ機材では、4月13日 までの2カ月の期間しかありません。

これまでのMISAOプロジェクトの経験では、1カ月の期間を空けて撮影した画像 を比較しても、ほとんど変光星は検出されません。2カ月の期間では、ごく少 数の星の変光が捉えられます。しかし、4カ月ほど期間が空くと、多数の星が 変光しているようになります。これは、ミラ型変光星の周期が300日前後であ ることが原因と考えています。

以上より、天の川の中を、CCDを使って14〜16等まで写すことができれば、多 数の新変光星を発見できることが分かります。MISAOプロジェクトの新変光星 は、すべて口径18cm以下のアマチュアの望遠鏡で、20秒〜1分程度の露出時間 で撮影した画像から発見されています。似たような機材をお持ちであれば、天 の川の中で好きな領域を決めて画像を撮影し、3〜4カ月経ってから再び撮影し て、その画像をMISAOプロジェクトにお送り下さい。すぐに新変光星を発見で きると思います。発見された新変光星は MisV として登録し、画像の撮影者の 名前を明記した上で、世界に向けて発見を公表します。

特に、小惑星捜索用のCCD画像には、膨大な数の新変光星が埋もれているので はないかと考えています。実は、これまでにMISAOプロジェクトに提供された 画像を検査しても、新小惑星は勿論、既知の小惑星すらほとんど検出されませ んでした。このことから、未知の変光星の個数は、小惑星の個数よりも遥かに 多い、ということが示唆されます。おそらく、小惑星捜索用の画像の場合、わ ずかな時間差で撮影した2枚の画像を比較して、移動天体をチェックすること しか行われていないと思われます。実際に、小惑星捜索用の画像からはいくつ もの新小惑星が発見されている訳ですから、検査さえすれば、それ以上の数の 新変光星が検出できるのではないかと期待されます。

門田健一氏と吉田誠一による上尾サーベイチームは、4月初めから、16cm F3.3 反射望遠鏡で本格的なサーベイ活動を行っています。このサーベイで得られた 画像からも、既にいくつかの新変光星が発見されています。しかし、活動が始 まって2カ月しか経っていないため、まだ1回しか撮影していない領域が大部分 です。また、2回以上撮影している場合でも、期間が短いために、長周期変光 星の多くが顕著な変光を示していないと思われます。そのため、期間が4カ月 に達する夏以降には、これらのサーベイ画像から、多数の新変光星の発見が期 待できると思っています。

尚、上尾サーベイチームでは、彗星や超新星を精力的に撮影しています。明る い超新星の場合は、同じ領域を数カ月間撮影し続けることになります。ですが、 これまでに超新星の近傍からは新変光星は発見されていません。これは、一般 に超新星は星の密度が小さい領域に出現するためです。前述のさそり座新星 1998の画像からは、PIXYシステムによって約6000個の星が検出されていますが、 超新星の場合は200〜400個程度しか検出されないことが多く、画像1枚あたり の発見の効率も1/15から1/30でしかありません。

P.S.
過去のMISAOプロジェクト・アナウンスメイルは

http://www.info.waseda.ac.jp/muraoka/members/seiichi/misao/index-j.html
で閲覧できます。

* MISAOプロジェクトで発見された新変光星一覧

Code     R.A. (J2000.0) Decl.  Max    Min   ID               
------------------------------------------------------------
MisV0001 175226.59 -174000.7  13.9C  16.9C  
MisV0002 072403.56 +412602.0  13.3C  14.7C  GSC2965.0210 USNO1275.06972791
MisV0003 175244.93 -172401.4  12.5C  13.4C  
MisV0004 175313.59 -172844.2  12.1C  13.9C  
MisV0005 165928.08 -132314.1  12.3C  14.1C  USNO0750.10268837
MisV0006 175605.00 -311520.9  11.7C  12.9C  
MisV0007 170005.99 -160414.3  12.7C  13.8C  USNO0675.11655030
MisV0008 175553.96 -311443.2  14.1C  14.9C  
MisV0009 185911.39 -013410.9  11.5C  13.4C  USNO0825.13934695 IRAS18565-0138
MisV0010 175513.12 -311451.8  13.2C  15.8C  USNO0525.24816214
MisV0011 175040.92 -174038.1  12.0C  13.6C  IRAS17477-1739
MisV0012 175644.26 -310401.5  11.9C  13.1C  IRAS17534-3103
MisV0013 175648.87 -310148.7  12.4C  14.5C  
MisV0014 175637.90 -310045.7  12.6C  16.3C  
MisV0015 175626.80 -311101.1  12.9C  14.3C  USNO0525.24950305
MisV0016 175639.69 -305928.7  13.0C  14.8C  
MisV0017 175722.16 -305457.3  11.2C  14.6C  
MisV0018 175448.31 -310220.2  11.8C  15.0C  
MisV0019 175456.77 -310225.8  14.0C <16.5C  IRAS17516-3101
MisV0020 175452.49 -310248.3  13.4C  15.3C  
MisV0021 175531.57 -310523.0  11.9C  14.5C  
MisV0022 175528.00 -310425.0  12.6C  17.1C  
MisV0023 175553.13 -310224.8  15.1C  16.4C  
MisV0024 175558.13 -304710.7  13.3C  16.5C  
MisV0025 175633.46 -304629.0  13.3C  14.6C  
MisV0026 175708.98 -305822.8  13.6C  14.6C  
MisV0027 175444.64 -310539.9  13.0C <16.5C  
MisV0028 175517.97 -310032.8  13.8C <16.0C  
MisV0029 175444.64 -305340.2  13.2C <15.5C  
MisV0030 175637.14 -305105.4  14.7C  16.4C  USNO0525.24967963
MisV0031 175424.43 -310534.1  14.5C  16.2C  USNO0525.24729694
MisV0032 175437.67 -305327.4  13.9C  16.9C  
--
吉田 誠一 / Seiichi Yoshida
seiichi@muraoka.info.waseda.ac.jp  GFB03015@nifty.ne.jp
http://www.info.waseda.ac.jp/muraoka/members/seiichi/index-j.html

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