MISAO Project

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1999年9月21日

    変光星捜索領域の重なり    

MISAOプロジェクト・アナウンスメイル (1999年9月21日)

MISAOプロジェクトの吉田誠一です。

1999年9月21日現在、MISAOプロジェクトで発見された新変光星(MisV)は472個 に達しています。7月22日に100個目の新変光星MisV0100を発表した後は、1日 に約6個の割合で発見数が増え続けています。

新変光星はすべて、上尾サーベイチームの門田健一氏が撮影した画像から見つ かっています。これまで、上尾サーベイチームは主に夏の天の川を捜索してき ました。そのため、新変光星はほぼすべて夏の天の川の中にあります。天球上 にプロットすると、次のようになります。横軸は度単位の赤経、縦軸は赤緯で す。

ところで、MISAOプロジェクト以外にも、いくつかの変光星捜索プロジェクト があり、多数の変光星が発見されています。最近、上尾サーベイの捜索領域が 広がってきたため、MISAOプロジェクトで発見した変光天体が、既に他のプロ ジェクトで発見されていた、というケースが生じるようになってきました。

1999年2月から7月にかけて門田健一氏が撮影した画像を調べると、赤経 19h02m25s.63、赤緯-00o30'14".5 (2000.0) に、10.8等から12.0等の間で変光 する未知の変光天体が見つかりました。GCVS(General Catalog of Variable Stars)第4版やNSV(New Catalogue of Suspected Variable Stars)には、該当 する変光星は記録されていませんでした。そこで、この天体を新変光星 MisV0130として発表しました。しかし、加藤太一氏によって、この変光星が既 にFASTT(Flagstaff Astrometric Scanning Transit Telescope)プロジェクト で発見され、HS1332 (FASTT1332) として発表されていることが指摘されまし た。

MISAOプロジェクトで新変光星として発見した天体が、現在活動中の他のプロ ジェクトで既に発見されていた、というケースは、このMisV0130が初めてでし た。混乱を避けるために、この天体にMisV符号を付けたことは取り消しません。 よって、472個のMisV天体のうち、MisV0130だけが本当の意味では新変光星で はない、ということになります。

FASTTプロジェクトでは、米国海軍天文台のFASTT望遠鏡により、SDSSの較正星 域から、1602個の変光星を見つけています(但し、この中には既知の変光星も 含まれています)。その後は、MISAOプロジェクトのデータベースにFASTT変光 星も登録したので、これらの変光星を誤って新変光星として発表してしまうこ とはなくなりました。実際、MISAOプロジェクトでは HS1330 (FASTT1330), HS1463 (FASTT1463), HS1466 (FASTT1466) の変光も捉えていますが、新変光 星としては発表していません。

余談ですが、HS1463 (FASTT1463), HS1466 (FASTT1466) の近くには、V886 Aql, VX Aql という既知の変光星が存在するはずです。しかし、上尾サーベイ チームの画像には、該当位置付近には、これらのFASTT天体以外の変光天体は 見つかりません。よって、MISAOプロジェクトでは、HS1463 (FASTT1463) と V886 Aql 、HS1466 (FASTT1466) と VX Aql をそれぞれ同一天体と判断してい ます。

また、1999年4月から8月にかけて門田健一氏が撮影した画像を調べると、赤経 17h59m41s.66、赤緯-00o35'31".0 (2000.0) に、12.9等から14.7等の間で変光 する未知の変光天体が見つかりました。これも、GCVSやNSV等には、該当する 変光星は記録されていませんでした。しかし、加藤太一氏によって、この変光 星が既にTASS(The Amateur Sky Survey)プロジェクトで発見され、TASS J175944.6-003558 として発表されていることが指摘されました。よって、こ の天体も新変光星として発表はしませんでした。

TASSプロジェクトは、世界中のアマチュアが共同で捜索をしているというもの で、これまでに50個の変光星を発見しています。MISAOプロジェクトでは、こ れらの変光星もデータベースに登録しました。

尚、TASS新変光星はすべて、赤緯が-2.4度から+1.5度の間の赤道付近に収まっ ています。また、FASTT新変光星の多くも、やはり赤道付近に存在します。で すが、MISAOプロジェクトでは、赤道付近からも、これらのプロジェクトで発 見されていなかった新変光星を多数発見しています。赤道から±2度以内に限っ ても、MisV0009を初めとして、18個の新変光星を発見しています。

また、OGLE(Optical Gravitational Lensing Experiment)というプロジェクト では、58個の長周期変光星が見つかっていますが、そのうちの56個は、赤経18 時、赤緯-30度を中心とした7×9度の領域に集中しています。実は、この辺り は上尾サーベイチームが最も集中して捜索した領域でもあります。実際、この 領域から発見されたMisV新変光星は86個と、全体の18%に上ります。しかし、 MISAOプロジェクトで見つかった変光天体がOGLEプロジェクトで発見されてい た、というケースは、今のところありません。

更に、日本人のアマチュア天文家の高見澤今朝雄氏、長谷田勝美氏によっても、 それぞれ515個、32個の変光星が発見されています。しかし、MISAOプロジェク トで発見された変光天体がこれらと重複したケースは一度もありません。

これらの結果から、たとえ既に変光星の捜索が行われた領域であっても、多数 の変光星が未発見で残されていることが分かります。全天ではまだ捜索されて いない領域も多く、まだまだ膨大な数の変光星が未発見で残されているのでしょ う。

ここで紹介した変光星捜索プロジェクトで発見された新変光星のリストは、 MISAOプロジェクトのホームページの、「カタログ一覧」のページ:

http://www.info.waseda.ac.jp/muraoka/members/seiichi/misao/doc/reference-j.html

から入手できます。

P.S.
過去のMISAOプロジェクト・アナウンスメイルは

http://www.info.waseda.ac.jp/muraoka/members/seiichi/misao/index-j.html
で閲覧できます。

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吉田 誠一 / Seiichi Yoshida
seiichi@muraoka.info.waseda.ac.jp  GFB03015@nifty.ne.jp
http://www.info.waseda.ac.jp/muraoka/members/seiichi/index-j.html

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