MISAO Project

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2000年11月28日

    ブルーミング・ストリーク除去フィルター    

MISAOプロジェクト・アナウンスメイル (2000年11月28日)

MISAOプロジェクトの吉田誠一です。

天体画像自動検査システム「PIXYシステム2」に、ブルーミングおよびストリー クを除去するフィルターを組み込んで、公開しました。

CCDカメラで撮影した画像の写野内に明るい星が入ると、ブルーミングやスト リークといった現象が発生します。

ブルーミングやストリークは、画像を観賞する上で邪魔になるだけでなく、 PIXYシステムを使った画像の自動検査でも、問題を引き起こします。

ブルーミングとは、明るい星が飽和してしまい、溢れた光が縦に強烈な線となっ て現われるものです。PIXYシステムは星の位置を、ピクセル値の重心として求 めますが、ブルーミングが発生すると、溢れた光の線によって重心の位置がず れてしまいます。その結果、星表と比較した際に、検出された明るい星の該当 位置にデータが見つからず、誤って「新天体」と出力されてしまいます。

ストリークとは、明るい星の片側に、刷毛で掃いたような、彗星の尾のような 光の帯が現われるものです。ストリークの起きている場所のピクセル値は他の 場所より高いため、PIXYシステムが誤ってノイズを検出し、「新天体」として 出力してしまうことがあります。

今回組み込まれたフィルターは、ユーザがパラメータの指定や調整を行う必要 は無く、自動的にブルーミングやストリークを除去します。そのため、MISAO プロジェクトで行っているような、多数の画像を自動検査する場合に有効です。

フィルターの実行結果を、以下のページで公開しています。

http://www.aerith.net/misao/pixy/result/blooming-j.html

M45の画像では、多数の星がブルーミングを起こしていますが、ブルーミング 除去フィルターによって消されています。

2000 UV13 の画像では、ブルーミングとストリークが同時に発生していますが、 最初にストリーク除去フィルター、次にブルーミング除去フィルターを適用し た結果、どちらもほぼ消すことができています。また、斜鏡による十字型の模 様や、ストリーク内の星は、消されずに残されています。

M31の画像は、ストリークが無く、淡い星雲が写っているものです。これにス トリーク除去フィルターを適用しても、星雲が消えないことを示しています。

# このページで画像を使わせて頂いた門田健一氏、村松利一氏に感謝致します。

PIXYシステムはソースファイルも公開されていますので、これらのフィルター のソースファイルも、ホームページから入手することができます。

なお、これらのフィルター、特にストリーク除去フィルターは、処理に時間が かかります。コンピュータや画像サイズに依りますが、1分から10分ほどの時 間がかかります。

MISAOプロジェクトでは、過去に同じ領域を撮影した画像が提供されている場 合のみ、新天体の検索を行っています。しかし、実際には、同じ領域を撮影し た画像が存在しないものの方がずっと多くあります。これまで、1000個以上の 新変光星を発見していますが、実際に検索が行われた画像は、ご提供頂いた画 像のごく一部でしかありません。

同じ領域を撮影した画像がない場合は、星表と比較するしかありません。しか し、CCDでは赤い星が極端に明るく写るため、星表に無い星が写っていたとし ても、新天体である可能性はほとんどありません。実際、画像に写った12等星 が、20等星まで記録されているはずのUSNO-A1.0に記載されていないというこ とは、しばしば起こります。

とはいえ、もし画像に6等星が写り、それが星表に記載されていないとなれば、 新星のような注目すべき新天体の可能性があります(勿論、小惑星などをチェッ クする必要があります)。同じ領域を撮影した画像がない場合でも、星表に記 載されていない明るい星が検出された場合は、確認をする価値があります。し かし、そのような明るい星はブルーミングを起こしていることがほとんどです。 これまでは、ブルーミングのためにすべての明るい星が位置がずれて「新天体」 として出力されてしまっていました。そのため、明るい新天体候補も見逃して きました。

しかし、ブルーミング除去フィルターを適用すれば、位置のずれが無くなりま す。その結果、MISAOプロジェクトに提供された画像すべてについて、少なく とも明るい新星の検査は自動的に行えるようになります。

なお、現在のバージョンでは、いくつかの制限があります。

  • ストリークは水平方向に伸びていなければなりません。
  • ブルーミングは垂直方向に伸びていなければなりません。
  • 2つ以上の星を貫くブルーミングや、ブルーミングの線だけあって星が写野内に無いような場合は、想定していません。

また、実際に処理した画像がまだ少ないため、画像によってはうまく除去でき ないことがあると思われます。そのような場合は、吉田誠一までご連絡くださ い。

P.S.
過去のMISAOプロジェクト・アナウンスメイルは

http://www.aerith.net/misao/index-j.html
で閲覧できます。

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吉田 誠一 / Seiichi Yoshida
comet@aerith.net
http://www.aerith.net/index-j.html

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