MISAO Project

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2001年2月7日

    MISAOプロジェクトのPIXYシステム2への移行    

MISAOプロジェクト・アナウンスメイル (2001年2月7日)

MISAOプロジェクトの吉田誠一です。

21世紀になり、MISAOプロジェクトの活動はPIXYシステム2に移行しました。

PIXYシステム2の開発はまだ途中です。多くの機能がまだ実装されておらず、 また機能はあってもグラフィカルユーザインターフェース(GUI)が用意されて いないものもあります。しかし、旧来のPIXYシステム1を使用して行って来た MISAOプロジェクトの活動のうち、下記のものは既にPIXYシステム2で可能に なっています。

  • 画像を検査して、中心の座標や画角、極限等級等の画像情報を得る。
  • すべての星の赤経赤緯と光度を測定する。
  • 領域の重なる画像どうしを比較し、新変光星を発見する。

残念ながら、現時点ではまだデータベースの準備が整っていないため、これま でのMISAOプロジェクトの活動のうち、下記の活動は行えない状態になってい ます。

  • 既知変光星の光度測定と変光星ネットワーク(VSNET)/日本変光星観測者連盟(VSOLJ)への報告

すべての活動をPIXYシステム2に移行するにあたり、今後ご提供頂く新しい画 像を新しいシステムで検査するだけでなく、これまでに提供して頂き、既に 旧来のPIXYシステム1で検査済みの画像も、すべてPIXYシステム2で再検査し 直す予定です。これは、PIXYシステム2ではデータ形式がすべて変更されてい ることと、従来よりも性能が改善されていることの、2つの理由があります。

データ保存形式として、PIXYシステム2ではXML(eXtensible Markup Language)を採用しました。旧来のシステムでは、検査結果はPXFという独自形 式で保存されていましたが、統一性が無い、メモリ上のデータとファイルに保 存したデータとの可逆性が保証されていない、等の様々な問題がありました。 データ形式をXMLとすることで、これらの問題が解決され、データの可用性が 増しました。GUIからのデータの操作も行いやすくなっています。

MISAOプロジェクトで使用している既知変光星のデータベースや、測定した光 度のデータベース、更にはPIXYシステムをバッチ実行するためのバッチファイ ルも、旧来のシステムではそれぞれ独自の形式となっていましたが、PIXYシス テム2ではすべてXMLに基づくようになっています。

保存されるデータの内容も見直されています。例えば、従来の測定光度には使 用したフィルターの種類しか付記されていませんでしたが、比較星のカタログ 名や、CCDのチップ名も、併せて付記するようになっています。

また、PIXYシステム2では、下記の2つの点で、旧来のシステムよりも性能が 向上しています。

  1. ブルーミングしている明るい星の中心位置の測定
  2. 星像の過剰分離の抑制

旧来のシステムでは、ブルーミングしている星の中心位置が大きくずれてしま いました。その結果、ブルーミングしている星がすべて、カタログに記載され ていない「新天体」としてリストアップされてしまいまいした。この問題は、 画像の検査前にブルーミング除去フィルターを適用することで解消しました。

特にピントが甘い画像の場合、1つの星の像が2つ以上に分離されて、複数の 星として検出されてしまうことがありました。この場合も、カタログに記載さ れていない「新天体」としてリストアップされてしまいました。PIXYシステム 2では、画像全体のピントが甘い場合だけでなく、一部だけで甘い場合も考慮 し、過剰分離を抑制するようにしています。

この2つの改良によって、ご提供頂いた画像をに対して新たに行えるようになっ た検査が1つあります。

CCDを使うと、カタログに記載されていない星がたくさん写ります。よって、 カタログと比較するだけでは、新天体を探すことはできません。しかし、例え ば6等や7等というかなり明るい星がカタログに記載されていない場合は、新 星のような本物の新天体である可能性が高くなります。

旧来のシステムでは、誤って新天体とリストアップされる個数が多かったため、 カタログに記載されていない本物の明るい星を見つけることは困難でした。し かし、PIXYシステム2では誤報が大幅に減少したので、リストアップされた候 補を確認することができるようになりました。

この結果、従来は同じ領域を撮影した画像が揃って新変光星を捜索できるよう になるまでは、ご提供頂いた画像に有効な検査を行えなかったのですが、1夜 だけの画像でも、明るい新天体のチェックだけは行うようになりました。

PIXYシステム2では、画像の検査成功率も若干向上しています。例えば、旧来 のシステムで昨年秋に1119枚の画像を検査した時には、検査に成功した画像は 1082枚で、成功率は96.6%でした。一方、この1ヶ月間にPIXYシステム2で検 査した3737枚の画像の場合は、検査に成功した画像は3699枚で、成功率は 98.9%でした。

すべての画像を再検査することにより、これまでVSNET/VSOLJに報告した述べ 約5万個の変光星光度データも、すべて再測定した値で報告し直すことになり ます。現在はまだ既知変光星の光度測定を行えませんが、準備が整い次第、こ れまでの報告をキャンセルし、測定し直した値を報告する予定です。

P.S.
過去のMISAOプロジェクト・アナウンスメイルは

http://www.aerith.net/misao/index-j.html
で閲覧できます。

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吉田 誠一 / Seiichi Yoshida
comet@aerith.net
http://www.aerith.net/index-j.html

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