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2001年2月28日星の光度の測り方MISAOプロジェクト・アナウンスメイル (2001年2月28日) MISAOプロジェクトの吉田誠一です。 皆さんは何か天体を観測した時に、その天体の明るさを、どのようなカタログ と比較して、どのように決定すれば良いか、悩んだ経験はありませんでしょう か。 MISAOプロジェクトのホームページでは、VSOLJ(日本変光星観測者連盟)のメー リングリストで加藤太一氏と清田誠一郎氏にご教示頂いた、天体の光度の決め 方についてまとめたページを公開しました。また、PIXYシステム2に、この文 書で紹介する3通りのやり方に従って天体の光度を求める機能を追加しました。 PIXYシステム2を使って測光を行う方法も、ホームページで紹介しています。 http://www.aerith.net/misao/pixy/tutorial/photometry-j.html 1. 測光のガイドライン撮影に使ったフィルターやCCD、そして使用する比較星のカタログによって、 測光方法は3通りに分かれます。 (1) 標準フィルターを使った場合V や B, Rc といった標準フィルターを使って撮影した場合は、フィルターと 同じ標準システムの光度が記載されているカタログを使用します。例えば、V バンドフィルターで撮影した場合は、V光度が記載されているカタログ(例え ば Tycho Catalogue 等)を使用します。 この時、ある星のV光度がカタログに10.0等と記載されていれば、それより2.5 倍明るい星の光度は9.0等となります。 原則として、標準フィルターはCCDチップごとに異なるものとなります。使用 しているCCDのチップに適したフィルターを使う必要があります。その代わり、 このようにして求めた標準システムでの光度は、他の観測者の同じバンドの光 度と並べて比較することができます。 なお、使用したフィルターの標準システムの光度がカタログに記載されていな い場合は、他のバンドの光度を使って換算することになります。例えば、Rcフィ ルターで撮影した場合、Tycho Catalogue にはRc光度は記載されていません。 そのため、カタログに記載されているV光度とB-Vの値から、 Rc = V - 0.5 * (B-V) という近似式で求めたRc光度を使います。 (2) 非標準システムの場合ノーフィルターCCD画像や、標準でないフィルター(赤外カットフィルター等) を使って撮影した場合は、その観測システムの特性を表す式を求め、カタログ に載っている標準システムでの光度から、貴方のシステムに適した光度に換算 する必要があります。 一般に観測システムの特性は、V光度とB-Vの値から、 観測システムの光度 = V + k * (B-V) という1次式で近似します。 KAFやTC-241等、いくつかの代表的なCCDチップについては、Arne A. Henden氏 の研究でシステムの特性を表す式が求められています。 Henden, A. A., "The M67 Unfiltered Photometry Experiment", 2000, Journal AAVSO vol. 29, page 35. ftp://ftp.nofs.navy.mil/pub/outgoing/aah/m67/paper/ それ以外のCCDチップを使った場合や、標準でないフィルターを使った場合は、 まず初めに、観測した画像からシステム特性を表す式を求める必要があります。 システム特性を表す式が求められたら、Tycho Catalogue のような、V光度と B-Vの値が記載されているカタログから、システム特性を表す式で貴方のシス テムに適した光度を求め、その値と比較します。 例えば、ある星のV光度とB-Vの値がカタログに V光度 = 10.0等 B-V = 0.8等 と記載されているとします。CCDチップがKAFで、ノーフィルター画像であれば、 Henden氏の研究から、システム特性は 観測システムの光度 = V - 0.5174 * (B-V) と分かります。よって、この星の貴方のシステムでの光度は、 観測システムの光度 = 10.0 - 0.5174 * 0.8 = 10.0 - 0.41392 = 9.6 となります。この星より2.5倍明るい星があれば、その光度は8.6等となります。 こうして得られた光度は、貴方が使用したCCDチップとフィルターに固有の光 度です。同じ機材で観測した他の観測者のデータとは比較できますが、CCDチッ プやフィルターが異なる場合は、比較できません。 (3) 単純な光度比較使用しているCCDチップやフィルターのシステム特性を表す式が分からない場 合や、V光度やB-Vの値が分かっている星が写野に入っていない場合などでは、 正規の方法で光度を決めることができません。 特に、写野が狭い場合は、GSCやUSNO-A2.0などのカタログでしか、天体の光度 が分からない場合もあります。 その場合は、カタログに記載されている光度と単純に比較して、目的の天体の 光度を決めるしかありません。 例えば、ある星の光度が、USNO-A2.0カタログでは R光度 = 10.0等 B光度 = 14.0等 と記載されているとします。この星より2.5倍明るい星があれば、USNO-A2.0の R光度と比較した場合は9.0等、B光度と比較した場合は13.0等となります。 こうして得られた光度は、真の値から大きく外れている可能性があります。ま た、基準が一定ではないので、同じカタログを使っていてもばらつきが生じま す。例えば、同じ明るさの星が、ある画像では10.0等となり、もう1枚の画像 では11.0等となることもあり得ます。 2. PIXYシステム2を使った測光の方法PIXYシステム2では、これら3通りの方法で天体の光度を求めるユーザ・イン ターフェースを作成しました。また、非標準システムの場合に、画像からシス テム特性を表す式を求めることもできます。 PIXYシステム2を使った測光の手順は、次の通りです。 まず、ホームページのチュートリアルにある通りに、画像を検査します。この 時、検出した星像の位置と暫定的な光度を求めるために、USNO-A2.0やGSCといっ たカタログを使用します。 検査結果には、USNO-A2.0またはGSCのデータも含まれます。但し、これらのカ タログには、標準の光度は記載されていません。正規の方法で光度を決める場 合は、チュートリアルに従って、Tycho Catalogue 等と同定を行う必要があり ます。 PIXYシステム2のデスクトップのメニューから「Photometry」を選ぶと、測光 の設定画面が開きます。ここで、使用するカタログやCCDチップ等を選択し、 非標準システムの場合はシステム特性の式を求めるかどうか等を設定します。 OKボタンを押すと、カタログの光度とデータ、そして求められた光度と残差が 一覧表で表示されます。この一覧表で、残差の大きいもの等を除外し、最後に Applyボタンを押すと、検出されたすべての星の光度が決まります。 あとは、チャートで星像をクリックすると、測定光度が画面に表示されます。 詳しくは、ホームページのチュートリアルをご覧下さい。
P.S. http://www.aerith.net/misao/index-j.htmlで閲覧できます。 -- 吉田 誠一 / Seiichi Yoshida comet@aerith.net http://www.aerith.net/index-j.html |