MISAO Project

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2001年3月26日

    固有運動の大きい星    

MISAOプロジェクト・アナウンスメイル (2001年3月26日)

MISAOプロジェクトの吉田誠一です。

MISAOプロジェクトにご提供頂いた画像は、たとえ同じ写野の過去画像が無く ても、USNO-A2.0等のカタログと比較し、もしカタログに載っていない明るい 星があれば、新星などの新天体かどうかをチェックしています。

新星らしい天体を見つけた場合は、DSS (Digitized Sky Survey) の過去画像 を検索して、写っていないかどうかをチェックしています。DSS画像は、以下 のサイトからダウンロードできます。

The STScI Digitized Sky Survey
http://stdatu.stsci.edu/dss/dss_form.html
Astronomical Image On-line Access Interface
http://dss.mtk.nao.ac.jp/

DSS画像は写真乾板ですので、ノーフィルターCCD画像と比較する場合は、注意 が必要です。特に赤色変光星は、DSS画像ではCCD画像よりも3等以上暗く写っ ていることが多くあります。

それでも、CCD画像に明るく写っている星が、DSS画像にまったく写っていない、 という場合は、本物の新星かもしれません。しかし、まだ注意が必要です。そ れは、固有運動によって位置が大きく移動している星があるからです。

MISAOプロジェクトにご提供頂いているアマチュアの画像からも、固有運動の 大きい星は多数見つかっています。このような、固有運動の大きい星の、最近 のCCD画像とDSS画像とを並べたものを、下記のページで紹介していますので、 ご覧下さい。

http://www.aerith.net/misao/pixy/result/proper-j.html

DSS画像には、DSS 1 と DSS 2 の2種類がありますが、全天を網羅している DSS 1 の画像と比べる場合は、特に注意が必要です。DSS 1 は1950年前後に撮 影されたものです。星の中には、1年間で数秒角も移動するものも少なくあり ません。これらは、50年経つと数分角も位置がずれていることになります。

新天体か、固有運動の大きい星かを区別するためには、DSS画像で、星の位置 の周りを良く見渡す、という以外に、固有運動の大きい星を集めたカタログを チェックする、という方法もあります。

Brian Skiff, John Greaves, Francisco Manuel Rica Romero の3氏から、下 記の5つのカタログをご紹介頂きました。

No. 1087B
Luyten Half-Second Catalogue, Second Edition (LHS; Luyten 1979)

No. 1079
Lowell Proper Motion Survey 8991 Northern Stars (Giclas 1971)

No. 1112
Lowell Proper Motion Survey - Southern Hemisphere (Giclas+ 1978)

No. 1098A
NLTT Catalogue (Luyten, 1979)

No. 5070A
Nearby Stars, Preliminary 3rd Version (Gliese+ 1991)

これらはすべて NASA の Astronomical Data Center からダウンロードするこ とができます。

http://adc.gsfc.nasa.gov/viewer/

Brian Skiff氏によると、北天は16〜17等まで、南天は約13等までの、固有運 動の大きい星がカタログとしてまとめられているそうです。

これまでにMISAOプロジェクトで見つかった固有運動の大きい明るい星は、ロー ウェル天文台のカタログ(No. 1079, 1112)に含まれていました。

変光星の中にも、固有運動の大きい星があります。下記のページでは、その中 でも興味深いものとして、岡山県岡山市の大倉信雄氏の画像に写っていた二重 変光星の例を紹介しています。

http://www.aerith.net/misao/pixy/result/proper-j.html

アンドロメダ座GQ、アンドロメダ座GXという変光星名が付けられているこの二 重星は、ルイテンのカタログ(No. 1087B)に LHS 3, LHS 4 という名前で登録 されている固有運動の大きいペアです。実際に回り合っている連星で、同じよ うに動いていることが分かります。Francisco Manuel Rica Romero氏によると、 この連星は GRB 34 AB という名前で知られ、周期2600年で回り合っているこ とが分かっているそうです。

固有運動の大きい星は、USNO-A2.0などのカタログの位置とずれているために、 PIXYシステムで検査すると、赤い色でマークアップされます。アマチュアの画 像でも容易に移動が分かりますので、新天体を探す場合には、注意が必要です。

P.S.
過去のMISAOプロジェクト・アナウンスメイルは

http://www.aerith.net/misao/index-j.html
で閲覧できます。

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吉田 誠一 / Seiichi Yoshida
comet@aerith.net
http://www.aerith.net/index-j.html

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