MISAO Project

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2000年8月29日

    他プロジェクトとの光度データに関する共同研究成果    

MISAOプロジェクト・アナウンスメイル (2000年8月29日)

MISAOプロジェクトの吉田誠一です。

MISAOプロジェクトの第1号新変光星の発見から1年半がすぎ、発見された新 変光星の数は、まもなく1000個に達しようとしています。

残念ながら、MISAOプロジェクトは開始されてからまだ日が浅いため、ほとん どのMisV新変光星は、データ数が少なく、変光型や周期など、詳しいプロフィー ルが分かっていません。

しかし、いくつかのMisV新変光星については、MISAOプロジェクト以外でも観 測が行われています。その結果、MISAOプロジェクトで得られたデータだけで は分からなかった周期が判明したり、興味深い現象を起こしていることが分かっ たものがあります。

MISAOプロジェクト以外でも観測されたMisV変光星について、すべての観測を まとめた光度曲線を、以下のページでまとめて、公開しています。

MisV変光星光度曲線
http://www.aerith.net/misao/data/curve-j.html

これまでに、以下の方々から、個人的に観測をお送り頂きました。

Arne A. Henden氏MisV0001 (*1)
Guy M Hurst氏MisV0884
Mike Collins氏MisV0884
Patrick Schmeer氏MisV0508
清田誠一郎氏MisV0001, MisV0955, MisV0956
*1) 画像もご提供頂きました。

MisV0001については、1999年4月19日のアナウンスメイルでご報告しました通 り、清田誠一郎氏の観測によって、周期390日のミラ型変光星であることが確 実となりました。

MisV0884については、Mike Collins氏とGuy M Hurst氏から、それぞれ興味深 い観測をお送り頂きました。なんと、MISAOの観測で、MisV0884が9.3等と明る い時期に、両氏の観測では、MisV0884は11等以下で写らなかったそうです。 特に、Hurst氏の観測は、MISAOと同様にノーフィルターCCDによるものなので、 この結果は天体の色では説明できません。奇妙な光度変化をしているのかもし れません。

MisV変光星の中には、M27の近傍や、近年の新星の近傍など、他の方も多く撮 影されていると思われる場所から見つかったものがあります。もし、ご自分の 画像にMisV変光星が写っていて、光度を測定した場合は、お知らせ頂けますと 幸いです。

ところで、CCDカメラで全天を網羅的に撮影し、星々の光度を蓄積して、変光 星を探すというプロジェクトは、MISAOプロジェクトの他にも、世界ではいく つか活動しています。そのうち、TASS (The Amateur Sky Survey) と、ASAS (The All Sky Automated Survey) の2プロジェクトでは、観測データがWWWで 公開されています。

これらのプロジェクトのパトロール画像にも、いくつかのMisV変光星が写って います。MisV変光星光度曲線のページでは、そのようなMisV変光星について、 TASSやASASのデータも併せた光度グラフを公開しています。TASSのデータの多 くは、Michael Richmond氏が調査されたものです。また、ASAS天体との同定は、 John Greaves氏が調査されたものです。

ASAS MisV0270, MisV0271, MisV0430, MisV0492, MisV0533, MisV0823, MisV0826, MisV0836, MisV0852, MisV0911
TASS MisV0009, MisV0130, MisV0138, MisV0142, MisV0143, MisV0144, MisV0161, MisV0162, MisV0164, MisV0165, MisV0250, MisV0351, MisV0352, MisV0430, MisV0573, MisV0696, MisV0701, MisV0740, MisV0824

このうち、MisV0009は、奇妙な光度変化をしています。 TASSのIバンドの観測 では、緩やかな減光の中に、短期間の食変光のような減光が見られます。 食 変光らしき減光は、JDで2450995日と2451022日の間に起こり、10.2等から12.4 等と、かなり深い食に見えます。しかし、TASSのIバンドの観測で減光してい る間、TASSのVバンドではほぼ一定で、むしろわずかに増光しているようにも 見えます。また、MISAOの観測では増光を捉えていますが、食のような現象を 除くと、周期が約500日強の、緩やかな変光のように思えます。

Richmond氏はまた、MisV0429, MisV0697, MisV0698, MisV0699の4星は、TASS の捜索領域内で、何度も撮影されているのにも関わらず、TASSでは捉えられて いないことを指摘しています。これは、MISAOでの最大光度がそれぞれ12.8等, 13.3等, 13.7等, 13.8等と暗いことが原因かもしれませんが、増減光が急激な のかもしれません。

ASASプロジェクトでも捉えられているMisV変光星は、ASASプロジェクトで多数 の観測がされていて、周期変光が明瞭に表れています。多くの変光星が、長周 期のミラ型もしくはSR型と判明しました。しかし、中には、MisV0911のように、 準周期的な変光をしているのに、明確な周期が求められなかったものもありま した。

このように、1プロジェクトだけでなく、プロジェクト同士のデータを結合す ることで、有益な情報が得られることがあります。MISAOプロジェクトでは、 新変光星を捜索するだけでなく、他の捜索家やプロジェクトで発見された新変 光星の光度も測定し、VSNETに報告しています。

MISAOの観測だけでも、奇妙が結果が得られている天体があります。MisV0073 は、ノーフィルターCCD観測の結果からは、周期約20日の短周期の変光星のよ うに見えます。 しかし、ノーフィルターCCDと赤外カットフィルターでのCCD 観測との光度差からは、MisV0073は赤色変光星のように思えます。

しかし、このような変わった振舞いを示している天体の素性を解明するには、 現状ではまだデータが足りない状況です。新変光星を発見するだけでなく、継 続して光度データを蓄積していくことも、MISAOの重要な課題であると考えて います。

尚、最近になって、2MASS (The Two Micron All Sky Survey) という、赤外で 全天を網羅的に観測したカタログが公開されました。加藤太一氏は、2MASSの データとMisV変光星との同定を調査され、多くのMisV変光星が、2MASSでは明 るい天体として記録されていることを明らかにされました。この結果、MisV変 光星は、大部分が赤色変光星であると判明しました。加藤太一氏はまた、 2MASSとの同定から、MisV0041の位置がずれていたことも発見されました。

このように、既存のカタログと照合することで、天体の素性を明らかにしたり、 ミスを発見できることがあります。今後は、大規模捜索もますます増えて、カ タログも多く発行されるようになると思われます。MISAOのようなアマチュア の活動でも、カタログが作成されることもあるでしょう。このようなカタログ の調査も、天文学の一環として、重要な活動になってくると考えています。 MisV変光星については、加藤太一氏と、John Greaves氏に、諸カタログとの同 定を行って頂いています。

P.S.
過去のMISAOプロジェクト・アナウンスメイルは

http://www.aerith.net/misao/index-j.html
で閲覧できます。

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吉田 誠一 / Seiichi Yoshida
comet@aerith.net
http://www.aerith.net/index-j.html

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