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進捗状況

現在はプロトタイプシステムが出来上がっていて、実験と改良を行っているとこ ろである。 このプロトタイプでは、画像から星像を検出し、星表とのマッチングを行って、 画像中の座標と赤経赤緯との変換を行う写像関数を求め、画像から検出した星像 と、星表から作成した画像と同じ領域の星図とを比較して見ることができる。

ここで、星像検出とマッチングについて、手法を詳しく解説する。

  • 星像検出
    星像検出の処理は次の通りである。
    1. フラットフィールド関数 tex2html_wrap_inline304 を求める。
    2. 各ピクセル値のフラットフィールドに対する差の標準偏差 tex2html_wrap_inline306 を求 める。
    3. 各ピクセルに対し、ピクセル値ptex2html_wrap_inline310 よりも大 きい場合は星像の一部とみなし、ピクセル値を tex2html_wrap_inline312 とする。小さい 場合は0とする。
    4. 値が0でないピクセルはいくつかの小領域に分かれている。各々を星像 とみなし、重心の座標と、光量として総ピクセル量を求める。

    一般に画像は中心が明るく、周辺は暗くなっているため、フラットフィールド は座標x,yの2次関数

    displaymath296

    と表す。 tex2html_wrap_inline318 のパラメータを最小2乗法で求める。

    現状では、近接した二重星や星団の各星の分離ができないケースが多い。また、 淡く広がる星雲状天体や線状に見えるノイズ等の判断はできない。

  • マッチング
    マッチングの前に、画像から検出した星像の等級をなるべく正確に与えておく 必要がある。本システムでは、画像と同じ面積の領域の恒星を星表から抽出し、 明るい順番に並べて、検出した星像の明るい順に光度を割り当てていくという 方法を用いている。そのため多少の誤差が生じている。

    マッチングの目的は写像関数を求めることである。写像関数とは、画像中のあ る座標x,yが、星表から作った星図中のどの座標にあたるのかを決める変換関 数である。具体的には、画像をある角度 tex2html_wrap_inline322 で回転させ、ある拡大率kで 拡大したものが、星図上のどこかに当てはまる。この両者の座標の相対的な差 tex2html_wrap_inline326 を含めた4つのパラメータが写像関数である。

    displaymath297

    displaymath298

    displaymath299

    figure

    写像関数は次の手順で求める。画像と星表からそれぞれ3個の星を選び出す。こ の時、画像から選んだ3星の作る三角形と、星表から選んだ3星の作る三角形が 相似になり、かつ対応する頂点の星の等級が近い場合、この画像中の3星は星表 中の3星と対応づけられる可能性がある。そこで、2つの三角形の間で写像関数 を求める。すべての星の組み合せに対し上記の処理を行う。ここで、正しい写 像関数に対しては、相似な三角形が多数できるため、この方法で写像関数のパ ラメータを求めると、正解に近い値が求められる回数が一番多くなると期待さ れる。逆に、偶然相似になった三角形から求めた写像関数のパラメータ値は分 散しているはずである。そこで、結果的に最も重複度の高いパラメータを正し い写像関数として採用する。実際には、パラメータ空間を適当な間隔で分割し、 それぞれの領域の重複度を求め、最も重複度の高いパラメータ領域内の値の平 均値を写像関数の値としている。

    この手法は、初めに入力される概略の付加情報に強く依存している。概略の赤 経赤緯は必ず画像内に入っているものと仮定している。また、画角は指定した 概略値の0.67倍から1.5倍でなければならない。それでも、パラメータがある1 箇所に集中することはなく、いくつかの写像関数候補が求められてしまう。こ れは最初に検出した星像に割り当てた光度の誤差が大きいことも強く影響して いる。但し、概略の回転角を指定できれば(例えば北が上になるように撮影して いると分かっていれば)、正しい写像関数の値が一意に求められる。

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