2006年4月29日〜5月4日(観測した彗星:13個)
群馬県・北軽井沢での彗星観測です。
※4/29の73P-Cの観測のみ、茨城県取手市(藤代)の自宅での観測です。
ゴールデンウィーク中は、73P/シュヴァスマン-ヴァハマン第3彗星の観測のために山に篭もりましたが、幸運にも天気に恵まれました。
73Pは、C核とB核がともに肉眼彗星となり、見事な眺めでした。C核は、雄大な姿が見事でした。B核は、期間中にみるみる成長していきました。ただ、その他の分裂核はいずれも期待を下回り、列を為す彗星を楽しむ、という訳にはいきませんでした。望遠鏡を向ける対象が多く、やたら忙しいのに、ほとんど見えないのでがっかりでした。しかし、C核とB核は見事で、その他にも明るい彗星が多く、楽しめました。
実は、MPCの古い軌道で星図を作っていたので、N核とR核は、ずいぶん違う位置を見ていました。特にR核は、ゴールデンウィーク中に12等台までバーストしていたそうなので、惜しいことをしました。多くの観測者が13等台と報告しているのに、星図からR核を導入しても15.0等の微光星しか見えなかったので、かなり自分の目を疑いましたが、それも当然でした。
4/29は、夜中すぎまで完全に曇っていましたが、3時に起きて外を見てみると、雲が晴れて星が見え始めていました。急いで単眼鏡を用意していると、あっという間に快晴になってしまいました。街灯のある自宅での、慌しい観測となりました。
4/30は、夕方は本降りの雨でした。22時を過ぎてもまだ止む気配がありませんでしたので、一眠りすると、0時半には一転して快晴になっていました。湿気が多いようでしたが、そのまま明け方まで快晴でした。ところが、3時半頃になって、快晴なのにぽつぽつと雨粒が降ってきました。天頂付近の73Pの分裂核に望遠鏡を向けていたので一大事で、急いで片付けました。10分ほどすると雲も出てきて、3:50頃には本格的な雨天に変わってしまいました。快晴の空で彗星観測中に雨が降ってきたというのは、初めての経験でした。
5/1は、夕方に快晴になりましたが、低空はかなり靄がでていました。薄明終了の頃から、北の方で雷が光っており、やがて雲が張り出して、22時頃には雨になりました。
5/2は、前線が通過し、午前中は雨、午後も曇でしたが、日没頃から急激に晴れ上がり、7時半には地平線すれすれまで雲1つない快晴となりました。透明度も抜群で、真冬のような絶好の条件でした。実際、かなり冷え込みました。特に、月が沈んだ後は最高で、夏の天の川の複雑な姿や、メシエ天体が肉眼で楽しめました。3〜4等星は、地平線(山の稜線)から昇った瞬間から、沈む瞬間まで見え、肉眼で恒星の出没が実感できました。この状態が明け方まで続きました。しかし、東の低空だけは、高崎や関東地方の光害がかなり目に付きました。
5/3は、前夜から引き続き、雲1つない快晴でしたが、やや透明度は劣っているようでした。夕方は月明の影響が大きく感じられました。でも、月が沈んだ真夜中以降はかなり透明度が良く感じました。しかし、3時前から急に透明度が悪化し、やがて全天を薄雲が覆ってしまいました。アイピースがすぐに雲ってしまい、なかなか観測に集中できません。ファインダーは凍り付いて、途中から良く見えなくなってしまいました。
5/4は、3日続けての快晴でしたが、さすがに透明度は悪かったです。もやのため月明の影響が大きいです。低空には薄雲がたなびいていました。特に東の低空は雲があったので、関東平野は雲が出ていたのかもしれません。しかし、天気と気流は落ち着いていて、257倍で見る土星は、縁までぴたりと停止して揺らがず、まるでハッブル宇宙望遠鏡の写真のような見事な眺めでした。月が沈んだ後の未明は、透明度もかなり良くなったようです。薄明開始の頃には、東の空の薄雲も無くなりました。
5月1日 12.8等 視直径1.0分 DC 6 (40.0cm 反射 144倍)
5月2日 13.1等 視直径1.1分 DC 5〜6 (40.0cm 反射 144倍)
5月3日 13.3等 視直径0.9分 DC 6 (40.0cm 反射 144倍)
5月4日 12.8等 視直径0.8分 DC 5 (40.0cm 反射 257倍)
まん丸く、それほど小さくはないような姿です。条件が良ければ、まだ充分に見えます。ただ、以前のような集光の強さがなくなり、淡い印象になってきた気がします。その代わり、以前より大きくなっていた気がします。
5/1は透明度が悪く、かなり暗く感じられましたが、測定値は他日と一致しました。5/3は、月没後に観測しました。
4月30日 12.0等 視直径2.5分 DC 2〜3 (40.0cm 反射 144倍)
5月2日 12.2等 視直径1.0分 DC 4 (40.0cm 反射 144倍)
5月3日 12.5等 視直径1.2分 DC 3〜4 (40.0cm 反射 144倍)
5月4日 12.6等 視直径1.5分 DC 3〜4 (40.0cm 反射 144倍)
4/30には、ずいぶん拡散しており、意外と大きく広がっているように見えました。しかし、さすがに40cmだと、中心部ははっきりと見えます。天の川の星々の中に浮かんでいる姿がたいへん美しく、印象的です。この感じだと、条件が良くなければ、暗く見積もったり、見えないという報告が寄せられるのも分かる気がしました。
5/2以降は、星に接近していたためか、見積もりがかなり小さくなりました。しかし、中心部だけ見ているためか、逆に、ほどよく集光しているように思えました。
5月2日 9.7等 視直径1.6分 DC 3 (40.0cm 反射 144倍)
5月3日 9.8等 視直径1.4分 DC 3〜4 (40.0cm 反射 144倍)
北西の空の超低空で、遠方の山の稜線のすぐ上でしたが、透明度が良いために観測できました。意外にも、まだ存在がはっきり分かります。淡く、そんなに小さくありません。
4月30日 11.1等 視直径1.4分 DC 1 (40.0cm 反射 144倍)
5月2日 11.7等 視直径1.9分 DC 3 (40.0cm 反射 144倍)
5月3日 12.3等 視直径1.5分 DC 3 (40.0cm 反射 144倍)
5月4日 11.9等 視直径1.6分 DC 3 (40.0cm 反射 144倍)
かなり拡散していますが、中心部ははっきりと見えます。C/2004 B1と同様、天の川の星々の中に浮かんでいる姿が印象的です。さすがに40cmだと、中心部はほどよく集光しており、まだ充分に楽しめます。5/2には、透明度が良いため、たいへん明るく大きく感じられました。5/4は、12等星のすぐ傍でしたが、彗星はかなり明るく、はっきり分かりました。
測定光度は、日ごとに暗くなっていきましたが、見ている時は、急激に減光しているという感じはありませんでした。
5月2日 13.2等より暗い 視直径0.5分 (40.0cm 反射 257倍)
5月4日 12.3等より暗い 視直径0.5分 (40.0cm 反射 257倍)
明け方の低空ですが、5/2は抜群の透明度のため、かなり暗い星まで見えました。5/2は予報位置に何かあるような気もしますが、14等台の星が見えていないので、たぶん彗星は見えていないと思います。5/4も快晴でしたが、測定結果を見ると、透明度の違いが明らかです。
5月1日 13.6等 視直径0.6分 DC 3 (40.0cm 反射 257倍)
5月2日 13.1等 視直径1.0分 DC 3 (40.0cm 反射 144倍)
5月3日 11.5等より暗い 視直径0.6分 (40.0cm 反射 144倍)
5月4日 12.4等 視直径0.7分 DC 3 (40.0cm 反射 257倍)
月がすぐ近くにある中での観測です。5/1は薄雲が迫り、もやっている中での観測です。5/3は、半月から4度しか離れておらず、しかも9等星のすぐ傍で、非常に条件は悪かったのですが、一応、バーストしていないことだけ確認しました。
結局、ゴールデンウィークの1週間には、大きなバーストは起こりませんでした。測定光度は、期間中に急激に明るくなっていきましたが、月明の影響がどんどん大きくなっていったため、見た目の印象では、増光してきたという感じはありませんでした。
この辺り、GSCの光度は、ASAS-3(V)より0.5〜1等も明るくずれています。
4月30日 12.2等 視直径0.7分 DC 4 (40.0cm 反射 144倍)
5月2日 12.7等 視直径0.7分 DC 3 (40.0cm 反射 144倍)
5月3日 12.6等 視直径0.8分 DC 4 (40.0cm 反射 144倍)
5月4日 12.4等 視直径1.3分 DC 4 (40.0cm 反射 144倍)
意外と明るくなっていました。やや低空で見づらいのですが、ぼんやりとした小さい姿が見えます。5/4には、意外に大きな姿に見えました。
4月30日 7.1等 視直径13分 DC 3〜4 尾0.5度(位置角230度) (10x70 単眼鏡)
4月30日 7.1等 視直径14分 DC 3 (10x24 双眼鏡)
5月2日 6.8等 視直径19分 DC 6 尾0.6度(位置角250度) (10x70 単眼鏡)
5月2日 7.1等 視直径20分 DC 4〜5 (10x24 双眼鏡)
5月3日 6.4等 視直径26分 DC 7 尾0.7度(位置角230度) (10x70 単眼鏡)
5月3日 6.0等 視直径33分 DC 3〜4 (10x24 双眼鏡)
5月4日 6.2等 視直径29分 DC 7 尾0.8度(位置角245度) (10x70 単眼鏡)
5月4日 6.1等 視直径26分 DC 6 (10x24 双眼鏡)
ゴールデンウィークの1週間に、バーストが起きたようで、みるみる明るく、集光が強くなっていきました。
4/30には、まだ拡散状で、集光は弱く感じました。コマが伸びたように見え、崩壊しつつあるような印象を感じました。40cmで見ても、中心核はそれほどはっきりせず、やや細く伸びているようでした。
しかし、5/2には、かなり大きくなり、集光もしっかりした姿に変わりました。40cmでも、2日前には見えなかった、明らかな恒星状の明るい核が見えました。5/3, 5/4と、だんだん小口径でも集光が強くなっていきました。
後半は、40cmで拡大して見ると、C核に似た感じになってきました。しかし、低倍率の双眼鏡では、C核とまったく違って、大きな、ぼんやりした星雲状です。5/3〜5/4にはひときわ巨大な姿となり、まさに地球に接近しつつあるという実感があります。
5/3〜5/4は、M13との接近が見事な眺めでした。彗星は、M13よりは淡いですが、はるかに巨大で存在感があり、まったく見劣りしません。
肉眼では、M13は楽に見えますが、彗星はあるようなないようなで、はっきりとは分かりませんでした。
4月29日 6.3等 視直径12分 DC 6 (10x70 単眼鏡)
4月30日 6.4等 視直径12分 DC 7 尾0.8度(位置角235度) (10x70 単眼鏡)
4月30日 6.2等 視直径12分 DC 7 尾0.4度(位置角235度) (10x24 双眼鏡)
5月2日 6.4等 視直径13分 DC 7 尾2.5度(位置角250度) (10x70 単眼鏡)
5月2日 6.4等 視直径14分 DC 6〜7 尾1.2度(位置角250度) (10x24 双眼鏡)
5月3日 6.0等 視直径16分 DC 7 尾1.2度(位置角240度) (10x70 単眼鏡)
5月3日 5.9等 視直径14分 DC 7 尾0.6度(位置角240度) (10x24 双眼鏡)
5月4日 6.2等 視直径12分 DC 7〜8 尾1.4度(位置角240度) (10x70 単眼鏡)
5月4日 6.1等 視直径18分 DC 7 尾0.7度(位置角240度) (10x24 双眼鏡)
空の条件が良いためか、皆さんの報告よりも明るく、尾も長く見えました。特に、5/2にはものすごく長い尾が見えました。
これだけ地球に接近しても集光は強く、頭部の輝きがしっかりしています。雄大な尾を伸ばした見事な姿です。尾は20度くらいの角度に広がって、かなり長く、典型的な大彗星のダストの尾のようです。地球に接近している彗星という実感はまったく感じられません。むしろ、大彗星を遠くから眺めているような印象です。
ただ、5/4には、尾がかなり大きく広がってきたような印象を感じました。
肉眼では、あるようなないようなで、はっきりとは分かりませんでした。
4/29の時点ですでに6等級と、かなり明るくなっていて驚きました。しかし、明るさは、ゴールデンウィークの1週間ずっと変わらなかった感じです。
4月30日 13.6等より暗い 視直径0.9分 (40.0cm 反射 144倍)
5月2日 13.9等 視直径1.0分 DC 2 (40.0cm 反射 144倍)
2週間前にはあれほど明るく見えたのに、4/30には見えなくなってしまっていました。山篭りの直前に、村上茂樹さんのメールで、減光した、という情報を得ていたので、慌てませんでしたが、そうでなければ星図の位置とかが心配になっていたところです。すっかり拡散しているとのことだったので、75倍でも試みましたが、やはり見えませんでした。
5/2は、抜群の透明度のためか、限界に近い拡散した姿が、かろうじて見えました。
5/3は、G核の観測中に薄雲が出てきたので、あまりちゃんと見られませんでした。彗星が見えたように、しかも集光が強くなったように思いましたが、2つの14.7等星が並んでいただけのようです。
5/4は、ちょっとずれた位置を見てしまいました。
4月30日 13.4等より暗い 視直径0.6分 (40.0cm 反射 144倍)
5月2日 13.9等より暗い 視直径0.6分 (40.0cm 反射 257倍)
5月3日 13.9等より暗い 視直径0.6分 (40.0cm 反射 257倍)
5月4日 14.2等より暗い 視直径0.6分 (40.0cm 反射 257倍)
4/30は、14.9等星は見えていましたが、その隣にいるはずの彗星は見えませんでした。5/2は、抜群の透明度の中、BC核は明るく見えましたが、AP核は見えませんでした。5/3は、小さく集光した姿が見えたように思いましたが、USNO-A2.0に載っている15.5等星でした。
4月30日 14.2等 視直径0.8分 DC 3 (40.0cm 反射 144倍)
5月2日 13.8等 視直径0.6分 DC 2 (40.0cm 反射 257倍)
5月3日 14.4等より暗い 視直径0.5分 (40.0cm 反射 257倍)
予報位置に、微光星のような小さい姿があるように思えました。限界に近いのですが、4/30, 5/2の2夜ともに彗星が見えたように思います。4/30は、観測中に雨が降ってきたので、ゆっくりとは確認できませんでしたが。
しかし、5/3には見えなくなってしまいました。この日は透明度がかなり良くなったみたいで、GSCにない微光星が、視野内に無数に見えました。一通りスケッチしましたが、すべてUSNO-A2.0に載っている、15〜16等星でした。彗星はその合間にあったようですが、見えませんでした。
5/4は、ちょっとずれた位置を見てしまいました。
5月2日 13.2等 視直径0.7分 DC 3〜4 (40.0cm 反射 257倍)
5月3日 13.9等より暗い 視直径0.7分 (40.0cm 反射 257倍)
山篭りの間はインターネットを見られませんでしたが、門田健一さんにお電話させて頂いて、そこでBC核の情報を教えて頂き、見ることができました。
5/2は、抜群の透明度だったためか、かなり明るく、意外と大きく見えました。観測中にみるみる移動していく様子が分かりました。
ところが、翌5/3には、急減光したのか、見えなくなってしまいました。
4/30は、BC核の情報を知らなかったのですが、AP核の観測中にも気づきませんでした。ちょうど、3つの13.5等星が集まった辺りに、BC核があったようです。
5/4は、大きく淡い、拡散したような、集光したような、良く分からない姿が見えたように思いました。USNO-A2.0の15.5等星も含めて目測してしまったようです。彗星も拡散状で見えていたと思いますが、重なっていた訳ではないので、光度を算出できず、報告できなくなってしまいました。
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