MISAO Project

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    新天体の捜索    

一夜の画像をまとめて扱い、彗星、小惑星、新星、超新星といった新天体を自動的に捜索する方法を解説します。 撮影時には、どの領域も必ず2枚ずつ画像を撮影しておきます。 予め、すべての画像をPIXYシステムで検査し、PXFファイルを生成しておきます。 また、同定に従って、既知変光星との同定を行っておきます。 更に、過去の画像もすべて検査してPXFファイルを生成しておき、光度データベースの構築に従って、光度データベースに登録しておきます。

o 概要

新天体の捜索を自動的に行うためには、撮影時に、どの領域も必ず2枚ずつ画像を撮影しておきます。 また、過去に同じ領域を撮影した画像があることが望ましいです。

PIXYシステムが出力する、星表に掲載されていない星(ND)は、実際には以下のいずれかに該当します。

  1. 新天体
  2. 明るく写った変光星
  3. 星表から欠落している普通の星
  4. 誤検出

予め同定に従って、既知変光星との同定を行っておくことで、2の明るく写った変光星を除外します。

次に4の誤検出を除外します。 ほぼ同じ時刻に撮影した2枚の画像がある場合、1または3の実在する星は、どちらの画像でもほぼ同じ位置にほぼ同じ光度で検出されます。 一方、4の誤検出は、ほぼ同じ位置にほぼ同じ光度で検出されることはまずありません。 そこで、一夜の画像をまとめて扱い、検出されたNDの中から、複数の画像から同じ位置に同じ光度で検出されたものだけを実在するものとし、それ以外を誤検出として除外します。

実在する星のうち、1の新天体は、過去の画像からは検出されませんが、2の星表から欠落している普通の星は、過去の画像からも同じ位置に同じ光度で検出されます。 そこで、過去に同じ領域を撮影した画像があれば、その画像の検査結果を読み込み、新天体か普通の星かを調べます。

最終的に残ったものが、新天体候補となります。

尚、この方法で超新星を探す場合は、同定データベースの構築に従って、同定データベースを構築する際に、星雲星団のデータを同定データベースに加えないようにします。 超新星は銀河の側に出現しますが、星雲星団は位置誤差が大きいために、超新星を検出しても銀河と同定されてしまい、新天体候補としては出力されなくなってしまいます。

o 実行

上尾サーベイで撮影した画像を例として、新天体を捜索する手順を解説します。 まず、1998年12月17日に、赤経9時から10時、赤緯+10度から+20度の辺りを撮影しました。 得られた画像は次の4枚です。 19981217 という名前のフォルダの中にまとめて置いておきます。

19981217/35mm/0900+1000-R-01.mtf
19981217/35mm/0900+2000-R-01.mtf
19981217/35mm/1000+1000-R-01.mtf
19981217/35mm/1000+2000-R-01.mtf

これらの画像をPIXYシステムで検査し、PXFファイルを生成します。 この時、画像の検査は 19981217 というフォルダのある場所で行うようにします。 こうすることで、PXFファイルには、

19981217/35mm/0900+1000-R-01.mtf
いう画像名が記録されます。 19981217/35mm/ というフォルダに移動してからPIXYシステムを実行すると、PXFファイルには、
0900+1000-R-01.mtf
いう画像名が記録されてしまいます。 そうすると、後で新天体の捜索を行う場合に、-pxfオプションでPXFファイルの場所を指定しないといけなくなります。

また、PXFファイルの名前は、画像名の拡張子を .pxf に変更しただけとします。 この結果、次の4つのPXFファイルが生成されました。

19981217/35mm/0900+1000-R-01.pxf
19981217/35mm/0900+2000-R-01.pxf
19981217/35mm/1000+1000-R-01.pxf
19981217/35mm/1000+2000-R-01.pxf

これらのPXFファイルに対し、同定に従って、既知変光星との同定を行っておきます。 更に、光度データベースの構築に従って、光度データベースに登録しておきます。

次に、1999年1月8日に同じ場所をもう一度撮影しました。 その画像を、19990108 というフォルダにまとめて置きます。

19990108/35mm/0900+1000-R-01.mtf
19990108/35mm/0900+2000-R-01.mtf
19990108/35mm/1000+1000-R-01.mtf
19990108/35mm/1000+2000-R-01.mtf

これらの画像も同様に、PIXYシステムで検査し、PXFファイルを生成します。 更に、既知変光星との同定、光度データベースへの登録も済ませます。

この時点で、以下の8つのPXFファイルが存在します。

19981217/35mm/0900+1000-R-01.pxf
19981217/35mm/0900+2000-R-01.pxf
19981217/35mm/1000+1000-R-01.pxf
19981217/35mm/1000+2000-R-01.pxf
19990108/35mm/0900+1000-R-01.pxf
19990108/35mm/0900+2000-R-01.pxf
19990108/35mm/1000+1000-R-01.pxf
19990108/35mm/1000+2000-R-01.pxf

1999年1月8日の画像に新天体がいないかどうかを調べます。

新天体の捜索は、PIXYシステムの-surveyオプションで行います。

一夜に撮影したすべての画像を検査して生成されたPXFファイルを、1つのフォルダに置いておき、そのフォルダ名を指定して実行します。 結果は標準出力に出力されます。 保存ファイルを指定すると、結果をファイルに保存します。

新天体捜索では、光度データベース及び画像情報の一覧表を参照します。 実行時には、java-Dオプションを使って、プロパティmisao.homeにMISAOホームディレクトリのパスを設定する必要があります。 ここでは、MISAOホームディレクトリを C:\misao とします。

この時、新天体の捜索の実行方法は、次のようになります。 捜索結果が、19990108.chk というファイルに保存されます。

java   -Dmisao.home=C:\misao   misao.pixy.Pixy   -survey   19990108   19990108.chk

o 結果

新天体の捜索を行うと、検出されたNDが、

  • Candidates of new objects
    過去画像からは一度も検出されなかった星
  • Candidates of variable stars
    過去画像で検出された光度が1.0等以上異なっている星、もしくは過去に1.0等以上暗くて検出されなかったことがある星(少なくとも1回は検出されている)
  • Normal stars
    過去にすべて検出されていて、光度が1.0等以内に一致している星
  • No data in past
    過去画像がなく、新天体かどうか判断できない星
に分類されます。

それぞれのNDについて、これまでの光度観測結果が列挙されています。 データ形式は、光度データベースと同じです。 それぞれ、赤経赤緯と位置誤差に基づいた名前が付けられます。 詳しくは、光度データベースの構築をご覧下さい。

**********************************************************************
Candidates of new objects
**********************************************************************
======================================================================
093941.63+185259.2-102.3
1998 Dec 17.68730       <8.9R           19981217/35mm/0900+2000-R-01.m
tf                (  79.47, 288.33)
1998 Dec 17.70119       <9.0R           19981217/35mm/1000+2000-R-01.m
tf                ( 571.19, 321.71)
1999 Jan  8.76706       6.5R            19990108/35mm/0900+2000-R-01.m
tf        ND-00001        (  52.82, 287.70)
1999 Jan  8.77731       6.5R            19990108/35mm/1000+2000-R-01.m
tf        ND-00001        ( 564.02, 305.46)

※ 都合により、一部強制的に改行しています。

これらは、1999年1月8日に複数の画像から同じ位置に同じ光度で検出されたもので、実在する星です。 1998年12月17日の結果を調べると、前者の星は写っていなかったことが分かります。 このような場合、新星や新彗星である可能性が高いことになります。 ですが、この場合は、調査の結果、小惑星ベスタであることが分かりました。

**********************************************************************
Normal stars
**********************************************************************
======================================================================
093506.95+101429.7-102.3
1998 Dec 17.68655       8.8R            19981217/35mm/0900+1000-R-01.m
tf        ND-00024        ( 109.08, 248.30)
1998 Dec 17.70207       8.9R            19981217/35mm/1000+1000-R-01.m
tf        ND-00016        ( 620.88, 282.70)
1999 Jan  8.76627       8.8R            19990108/35mm/0900+1000-R-01.m
tf        ND-00017        (  89.82, 239.30)
1999 Jan  8.77824       9.0R            19990108/35mm/1000+1000-R-01.m
tf        ND-00019        ( 620.00, 274.99)

※ 都合により、一部強制的に改行しています。

この星は、1998年12月17日にもほぼ同じ光度で写っています。 よって、こちらは普通の星と判定されています。

o PXFファイルのパス指定

PXFファイルを別のディレクトリに置いてある場合は、-surveyオプションの後に、-pxfオプションを指定し、PXFファイルのパスを指定します。

例えば、前述の例で、1998年12月17日の画像のPXFファイルはC:ドライブに、1999年1月8日の画像のPXFファイルはD:ドライブに置いてある場合は、次のように実行します。

java   -Dmisao.home=C:\misao   misao.pixy.Pixy   -survey   19990108   19990108.chk   -pxf   C:

複数のパスを指定する場合は、" " で囲みます。

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