ここでは、以下のサンプル画像をPIXYシステムで実際に検査してみます。
まず、下記のサンプル画像(sample.fts)をダウンロードして下さい。
http://www.aerith.net/misao/pixy/sample.fts
サンプル画像
この画像は、おおぐま座の一角、赤経11時48分、赤緯+48度付近を望遠レンズで撮影したもので、1x1度弱の範囲が写っています。
では、早速PIXYシステムでの検査を始めましょう。
まずは、Windows95のDOSプロンプト(UNIXならばkterm等)を開きます。
DOSプロンプトで次のように入力して、PIXYシステムを起動します。
java misao.pixy.Pixy -console
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もしPIXYシステムが実行できない場合は、インストールに戻って、JDKが正しくインストールされているか、CLASSPATHが正しく設定されているか等を確認して下さい。
JRE(Java Runtime Environment)をインストールした場合は、-cp オプションでパッケージを展開したディレクトリを指定する必要があります。
よって、DOSプロンプトで次のように入力して、PIXYシステムを起動します(次の例は C:\ で展開した場合です)。
java -cp C:\ misao.pixy.Pixy -console
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-consoleオプションを付けて実行すると、対話形式で設定を行うことができます。
PIXYシステムのオプションについて、詳しくは実行方法をご覧下さい。
さて、質問に答えながら設定を行っていきましょう。
ここでは質問文を下線付きの斜体で、その後で入力する文字列を太字で表しています。
- URL or filename of image: sample.fts
-
検査する画像のファイル名を入力します。
ここではsample.ftsと入力します。
- Exposure start date and time in UT: 1998 Mar 7 16:22:27
-
露出開始日時を世界時で指定します。
実際には、ここで入力した値はPIXYシステムでの検査には利用されませんので、省略して改行キーを入力してしまっても構いません。
但し、ここで入力した日時はPXFファイルに記録され、光度データベースに登録する際などに利用されます。
できれば、正しい日時を入力しておきましょう。
- Exposure in seconds: 20
-
露出時間を秒単位で指定します。
これも入力した値はPIXYシステムでの検査には利用されませんので、省略しても構いません。
- Input code: cdrom.gsc11
-
次に、検査に利用できる星表の一覧が出力され、コードを入力するように促されます。
通常は Guide Star Catalog 1.1 で充分で、大望遠鏡で撮影した場合に限りUSNO-A1.0 を利用することになるでしょう。
ここでは Guide Star Catalog 1.1 を利用することにし、そのコードである cdrom.gsc11 を入力します。
当然ですが、Guide Star Catalog 1.1 のCD-ROMを持っていることが前提となります。
- Root directories of the catalog: E:\
-
CD-ROMドライブを指定します。
ここでは E: ドライブがCD-ROMだとしています。
- Approximate position (J2000.0): 11 48 0 +48 0 0
-
画像の概略の位置(赤経赤緯)を入力します。
このサンプル画像の場合、だいたい赤経11時48分、赤緯+48度付近が写っていますので、これらの値を入力します。
- Position error in degree: 0
-
先程入力した概略の位置の見込み誤差を入力します。
通常は 0 でOKです。
- Approximate horizontal field of view in degree: 1
-
概略の画角を入力します。
このサンプル画像の場合、だいたい1x1度の範囲が写っていますので、1 を入力します。
- Limiting magnitude to be detected at least:
-
最低限検出する極限等級を入力します。
極限等級をPIXYシステムに自動的に設定させる場合は、何も入力せずに、改行キーを入力して下さい。
ここでは、何も入力しないことにします。
- Magnitude code:
-
何も指定せずに、改行キーを入力して下さい。
- Mirror image? [y/N]:
-
鏡像にはなっていませんので、何も指定せずに、改行キーを入力して下さい。
- SBIG ratio (ST-4/6)? [y/N]:
-
ST-4/6の画像ではありませんので、何も指定せずに、改行キーを入力して下さい。
- Reject cosmic ray? [y/N]: Y
-
宇宙線や白色ノイズは自動的に除去することにしましょう。
Y と入力して下さい。
- Print star data in detail (much memory are required)? [y/N]:
-
何も指定せずに、改行キーを入力して下さい。
- Filename to save midway progress (.log):
-
何も指定せずに、改行キーを入力して下さい。
- Filename to save results (.pxf): sample.pxf
-
検査結果を保存するPXFファイルのファイル名を指定します。
ここでは sample.pxf と入力します。
これですべての設定は終了です。
これらの設定項目について、詳しくは入力パラメータをご覧下さい。
設定が終了したら、PIXYシステムは画像の検査を開始します。
結果が出るまでに1〜2分ほど時間がかかると思います。
その間、途中経過が画面に出力されています。
PIXYシステムは、入力されたパラメータでの検査に失敗すると、概略の位置を少し修正して、9回までリトライを行います。
検査が終了すると、
- コントロールパネル(Control)
- 画像(Image)
- 検出星像をプロットした星図(Detected Stars)
- 星表の恒星データをプロットした星図(Catalog Data)
の4枚のウィンドウが開きます。
検出星像をプロットした星図(Detected Stars)
星表の恒星データをプロットした星図(Catalog Data)
表示された星図の星をマウスでクリックすると、測定データや、星表に記載されているデータがダイアログで出力されます。
上の2つの星図では、星が色分けして描かれています。
緑色で描かれているものは、位置、光度ともに星表に掲載されている通りに検出された星です。
新天体を捜索する場合は、これらの星は無視できるでしょう。
要注意天体として認識されたものが赤、黄、青のいずれかで描かれています。
どちらかの星図にしかないものは赤く描かれています。
検出星像をプロットした星図にある赤い星は、星表に掲載されていない星が画像に写ったというもので、新天体候補となります。
星表の恒星データをプロットした星図にある赤い星は、星表に掲載されている恒星が写らなかったというもので、カタログエラー候補となります。
黄色の星は、画像から測定した光度と、星表に掲載されている光度が大きく異なるもので、変光星の可能性があります。
青い星は、画像から測定した位置と、星表に掲載されている位置がやや異なっているもので恒星が固有運動で移動しているか、もしくは二重星や星雲等で位置測定精度が良くないというものです。
尚、位置と光度の両方とも測定した値と星表に掲載されている値が異なる場合は、黄色で描かれています。
このサンプル画像の場合、右下の銀河のすぐ右下に小さい星が写っています。
検査の結果、この星は赤い色で描かれており、Guide Star Catalog 1.1 には記載されていないことが分かりました。
よって、この星は超新星である可能性がある(*1)ことになります。
*1 調査の結果、この星はごく普通の星で、単に Guide Star Catalog 1.1 に記載されていないだけだと判明しました。
一方、星表の恒星データをプロットした星図には、かなり明るい星が数個、赤い色で描かれています。
サンプル画像の該当する位置には、何も星は写っていません。
よって、これらの星は実在せず、カタログのエラーであると思われます。
黄色で描かれている星は5個あります。
このうち、画像の左上の端にあるものは、画像の端にかかって正しい光度を測定できていないものです。
また、右端に近い2つの星は、サンプル画像を見ると、どちらも惚けて写っていますので、銀河であることが分かります。
残りの2個は変光星の可能性があります。
また、中央やや右上の星は、位置もやや違っています。
固有運動で若干移動したのかもしれません。
青で描かれている星は2個あります。
このうち、画像の左端にあるものは、画像の端にかかって正しい位置を測定できていないものです。
画像の右下にある星は、サンプル画像を見ると惚けて写っていますので、銀河であることが分かります。
尚、すべての検出星像の測定結果と星表に掲載されているデータは、PXFファイルに記録されています。
PXFファイルには、画像の中心の赤経赤緯や画角、極限等級などの詳細なデータも記録されています。
このサンプル画像のPXFファイルは、次のようになります。
sample.pxf
PXFファイルの読み方については、PXFファイルの書式をご覧下さい。
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